3.5 為一期(錦絵の時代 1820~1833  61~74歳)


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錦絵
〔風景画〕
(1)「富嶽三十六景」
    「富嶽三十六景」は1831年(天保2年)頃から出版されたもので、三十六図及び追加十図の四十六図よりなる。 このシリーズの意図は、当初の版元西村屋与八の出版広告に

「此絵は富士のかたちのその所によりて異なる事を示す 或は七里ヶ浜にて見るかたち又は佃島より眺る景など総て一やうならざるを著し山水を習う者に便す」

とあることよりだいたいの主旨が窺える。 広重の「東海道五拾三次」を始めとする名所絵のような目的で制作販売されたものではないことが明白である。 即ち、富士という対象物を気象・季節・視点など様々な条件下でとらえ、そのつどの異なる山容の表情に最大の興味が注がれている。
この姿勢は、ほぼ同時期に出版された「諸国滝廻り」(落下する水の変化)、「諸国名橋奇覧」(橋梁のバリエーション)、「千絵の海」(水の変化と様々な漁労)などに共通している。

全四十六図を別ページに展示するが、ここで、四十六図から八点をえらんで以下に示す。
神奈川沖浪裏
甲州石班沢
凱風快晴
山下白雨
神奈川沖浪裏 甲州石班沢 凱風快晴 山下白雨
遠江山中
尾州不二見原
本所立川
東海道金谷ノ不二
遠江山中 尾州不二見原 本所立川 東海道金谷ノ不二

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富嶽三十六景
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富嶽三十六景
 

(2)「諸国滝廻り」 全八枚 1833年 前北斎為一筆
下野黒髪山きりふりの滝 相州大山ろうべんの滝 東都葵ケ岡の滝 東海道坂ノ下清滝くわんおん
美濃国養老の滝 木曾街道小野ノ瀑布 木曽路ノ奥阿弥陀ケ滝 和州吉野義経馬洗瀧

(3)「諸国名橋奇覧」 全十一枚 1833-34年 前北斎為一筆
ゑちぜんふくゐの橋
山城あらし山吐月端
摂州天満橋 足利行動山くものかけはし ゑちぜんふくゐの橋 山城あらし山吐月端
かうつけ佐野ふなはしの古づ
かめゐど天神たいこばし
摂州阿治川口天保山
飛越の堺つりはし
かうつけ佐野ふなはしの古づ かめゐど天神たいこばし 摂州阿治川口天保山 飛越の堺つりはし
三河の八ツ橋の古圖
東海道岡崎矢萩のはし
すほうの国きんたいはし
三河の八ツ橋の古圖 東海道岡崎矢萩のはし すほうの国きんたいはし

(4)「千絵の海」 全十枚 1832-34年 
   企画時はさらに多くの出版がされていたらしく、現在、2点の校合摺が残っている。
総州銚子
蚊針流
甲州火振
待チ網
総州銚子 蚊針流 甲州火振 待チ網
宮戸川長縄
総州利根川
絹川はちふせ
五島鯨突
宮戸川長縄 総州利根川 絹川はちふせ 五島鯨突
下総登戸
下総登戸 相州浦賀

[名所絵〕
「琉球八景」 全八枚 1832年
    1832年に琉球使節の江戸参府があり、これに因んで出版されたもの。前年に官板で模刻された地誌『琉球国志略』の挿画をもとに北斎がアレンジしたもの。
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琉球八景

「勝景雪月花」   1832-33年
東都 飛鳥の花 東都 隅田の月 東都 品川の雪 摂津 桜の宮花
山城 四条の月 山城 嵐山の花

「雪月花」 全三枚 1832年
隅田 淀川 吉野

〔古典画〕
「詩歌写真鏡」 全十枚 1832-34年 前北斎為一筆
    和漢の著名な歌人(詩人)と、その歌意にともなう故事を題材にしたもの。
木賊刈 (世阿弥の謡曲「木賊刈」を題材)
在原業平  (画面の意味不明)
春道のつらぎ (古今和歌集に載せられている春道の「山川に風のかけたるしがらみは流れもあえぬ紅葉なりけり」が題材)
安倍の仲麿 (「天の原すりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」を主題)
木賊刈 在原業平 春道のつらぎ 安倍の仲麿
少年行 (唐の詩人崔国輔の「少年行」を題材)
伯楽天 (謡曲「白楽天」を題材)
清少納言 (和歌「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ」を題材)
融大臣 (世阿弥の謡曲「融」を題材)
少年行 伯楽天 清少納言 融大臣
李白 (廬山の滝を詠むだ李白を題材)
蘇東坡 ()
李白 蘇東坡

〔花鳥画〕
「西村屋版大判花鳥シリーズ」 全十枚 1833-34年 前北斎為一筆
芥子
桔梗にとんぼ
紫陽花に燕
菊に虻
芥子 桔梗にとんぼ 紫陽花に燕 菊に虻
牡丹に蝶
百合
朝顔に蛙
杜若にきりぎりす
牡丹に蝶 百合 朝顔に蛙 杜若にきりぎりす
檜扇
芙蓉に雀
檜扇 芙蓉に雀

「長大判花鳥図」 全五枚 1834年 前北斎為一筆    (49.5 x 22.5 cm)
滝に鯉
松に鶴
遊亀
桜に鷹
滝に鯉 松に鶴 遊亀 桜に鷹
牧馬
牧馬

「西村屋版中判花鳥シリーズ」 全十枚 1834年 前北斎為一筆
右の画像をクリックすると全10図を掲載する頁へジャンプします。
花鳥画

〔武者絵〕
 「山本屋版武者絵シリーズ」 全五枚 1833-35年 前北斎為一筆
鎌倉の権五郎景政 鳥の海弥三郎保則
楠多門丸正重 八尾の別当常久
大伴の真鳥 大友の宿祢兼道
渡辺の源吾綱 猪の熊入道雷雲
鎌倉の権五郎景政
鳥の海弥三郎保則
楠多門丸正重
八尾の別当常久
大伴の真鳥
大友の宿祢兼道
渡辺の源吾綱
猪の熊入道雷雲
鬼児嶋彌太郎 西方院赤坊主
鬼児嶋彌太郎
西方院赤坊主

〔相撲繪〕
記ノ名虎と大伴ノ善雄 1829 色摺木版に金箔、銀箔 21.3 x 18.8 cm 為一筆
記ノ名虎と大伴ノ善雄

〔化物絵〕
 「百物語」 五枚 1831-32年 前北斎筆
「百物語」とは、江戸時代に流行した遊びの一つで、数人が夜中に集まり、交代で怪談を語って話の終わるごとに蝋燭の灯を消していくと、最後の灯が消されたあとに怪異がおこるとされていたもの。

版行当初は百に及ぶ揃物として企画されたと考えられるが、現在以下の五枚のみしか確認されていない。
笑いはんにゃ
さらやしき
小はだ小平二
しうねん
笑いはんにゃ さらやしき 小はだ小平二 しうねん
お岩さん
お岩さん

〔掛物絵〕
    以下の絵は 72.5 x 23 cm の掛物大の錦絵。 揃物の版画のうち唯一現存するもの。
(日の出に鷹図) 1828年頃  印章:不染居
日の出に鷹図

〔団扇絵〕
     団扇絵は団扇に貼って使う消耗品であるため、遺存するものは少ない。
水辺の二羽の鴨 1831年 北斎改為一筆
鯉 1831年 北斎改為一筆
雉子と蛇  1830-33年 前北斎為一筆
群鶏 1835年 前北斎為一筆
水辺の二羽の鴨 雉子と蛇 群鶏

〔その他〕
「麦藁細工見世物」 大判四枚続 1820年 無款
   1820年に浅草奥山で興行された北斎下絵による麦藁細工の見世物の錦絵版。

「新板大道図彙」 全十二図  1825年 無款
    江戸庶民の風俗を描いた揃物。 全十二図を以下に掲げる。
小田原町 茅場町 外神田 通町
石町 馬喰町 佃島 御蔵前
? 四ツ谷 日本橋 本所

「森治版短冊判シリーズ」 1830-32年 前北斎筆 or 前北斎為一筆
    森屋治兵衛出版の市井風俗、動物、伝説、などを描く。 現在二十点ほど確認されている。
    うち十点を掲げる。
仕丁
軽業
瓦屋
武志士
年始
仕丁 軽業 瓦屋 武志士 年始
放下師
鯛釣り
桶屋
巡礼
深山の鹿
放下師 鯛釣り 桶屋 巡礼 深山の鹿

「狂句入戯画」 1830-33年 森屋治兵衛刊 前北斎画
    北斎は1820年代半ばから1833年頃まで川柳狂句の世界に入って、『柳多留』にも多く入句している。
    上部に狂句二句を掲げ、それに沿った戯画を描いたもの。
借シ夜具
鍛冶屋
素人義太夫
砧
借シ夜具 鍛冶屋 素人義太夫

摺物
「春興狂歌摺物」
「空満屋連和漢武勇合」三番(1820)のうち 『伍子胥と巴御前』
「空満屋連和漢武勇合」三番(1820)のうち 『大井子と樊?』 
「稚遊拳」三番(1823)のうち 『石』
『伍子胥と巴御前』 『大井子と樊?』  『石』
「空満屋連和漢武勇合」三番(1820) 「稚遊拳」三番(1823)
「?垣連和漢画兄弟」五番(1821)のうち『司馬温公と柴田勝家』
「?垣連和漢画兄弟」五番(1821)のうち 『藺相如と児島高徳』
『司馬温公と柴田勝家』 『藺相如と児島高徳』
「?垣連和漢画兄弟」五番(1821)

 「春興狂歌摺物」 の中で有名な「元禄歌仙貝合」「馬尽」を別ページに掲げる。
「元禄歌仙貝合」 三十六枚揃   1821年。月癡老人為一筆。
    四方側の春興狂歌摺物。 「後貝合」の貝の名に基づいて狂歌を詠み、北斎の絵と合わせたもの。
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元禄 歌仙貝合

「馬尽」 三十枚揃 1822年。不染居為一筆。
    「元禄歌仙貝合」の翌年刊行された四方側の春興狂歌摺物。 午年に因み揃物名を「馬尽」とし、
    そこから詠んだもの。
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馬尽

「長唄芳村家三代目家元 芳村伊三郎 一世一代会 摺物 (汐汲み)」 
    1830年 北斎改為一筆

その他
「七里ヶ浜ヨリ腰越ヲ眺望」1829 20.5 x 17.9 cm 前為一写意 摺物
よし野山満開図 1822 20.4 x 26.3 cm  不染居為一筆 摺物
不二図 1830 色摺り木版 21.1 x 17.8 cm 北斎改為一筆
七里ヶ浜ヨリ腰越ヲ眺望 人形遣い よし野山満開図 不二図

絵手本
この時期、絵手本として「一筆画譜」(1823)- 一筆書きの画譜、 「今様櫛キン雛形」(1823)- 櫛と煙管の絵手本、「新形小紋帳」(1824)- 着物の小紋の絵手本、などがある。
一筆画譜
一筆画譜
一筆画譜
今様櫛キン雛形
今様櫛キン雛形
今様櫛キン雛形
新形小紋帳
新形小紋帳
新形小紋帳
新形小紋帳

絵本
「北斎女今川」 1828年 表紙
「北斎女今川」 1828年 加賀騒動 局岩藤と中老尾上
「絵本庭訓往来」 182年 
「光悦正風 盆画独稽古」 1828年 月花永女という女性が書いた絵手本。 挿画は北斎。 
表紙 加賀騒動 局岩藤と中老尾上 「絵本庭訓往来」 月花永女という女性が書いた絵手本
「北斎女今川」 1828年  1828年  「光悦正風 盆画独稽古」 1828年
「大日本将軍記」 1830年頃 3巻本 
「新編水滸画伝」 1835年頃 馬琴・北斎の『水滸伝』の挿画を取りまとめたもの
「絵本忠経」 1834年 中国古典『忠経』に基づく
「大日本将軍記」 1830年頃 「新編水滸画伝」 1835年頃 「絵本忠経」 1834年

肉筆画譜  
「四季昼夜画譜」   1818-1830年   9.3 x 26 cm    ボストン美術館蔵
昼間24枚・夜間25枚、計49枚よりなる。

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四季昼夜画譜

肉筆画
早駆図 1826 紙本(オランダ紙) 27.8 x 40.1 cm シーボルトコレクション ライデン博物館
馬上の武士図 1826 紙本 31.6 x 45.4 cm パリ国立図書館 オランダ人船長ステュルレルのコレクション
神楽図 1826 紙本 45.2 x 31.5 cm
早駆図 馬上の武士図 神楽図
雄鶏図 1825年頃 前北斎為一筆
朝顔に鵜図 1827-33 前北斎為一筆
巌頭の鵜図 1827-33 葛飾前北斎為位置筆
雄鶏図 朝顔に鵜図 巌頭の鵜図
寒山拾得図 1830-33 前北斎為一筆
獅子図 1820年頃 北斎改為一筆
七福神図 1821年 葛飾為一筆 北斎と門下の弟子との集成作品
寒山拾得図 獅子図 七福神図
恵比寿と大黒図 1820年頃 前北斎為一筆
子規に萩図 1826年 為一筆
恵比寿と大黒図 子規に萩図
鈿女命と猿田彦命 1825 絹本 着色 胡粉 60 x 20 cm
月下猪図  文政年間1818-29
信州陬防湖水氷渡 1833-34
白椿に錦鶏図 1818-40
鈿女命と猿田彦命 月下猪図 信州陬防湖水氷渡 白椿に錦鶏図
鐘馗図 1826年 前北斎為一筆
軍鶏図 1827-32 前北斎為一筆
堀川夜討図 1825-33 北斎改為一筆
花魁道中図 1826 無署名(シーボルト注文品らしく、故に無署名か?)
軍鶏図 堀川夜討図 花魁道中図
歌占図 1827年 北斎為一敬画
白拍子図 1820年頃 北斎戴斗改為一筆
鏡見美人図 1826年 無署名(上の作品と同様)
鐘馗図 歌占図 白拍子図 鏡見美人図