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幻想美術(絵画)とは、現実にはありえない情景を幻想的に描いた絵画のことです。幻想絵画は個人の心に浮かぶイメージ、ヴィジョンを、描くもので、何をどう描くかは画家の自由に任されます。芸術は本来何ものにも束縛されない自由なものですが、たとえばバロック美術やルネッサンス美術には主題にも様式にもある種の「型」「きまり」があります。しかし幻想美術には特定の様式もなく、また流派もありません。
ヨーロッパ中世のキリスト教美術の時代は、現実に存在するものを見えるとおりに描くという精神は希薄で、天使やキリストはこうあるべきもの、という立場から、頭で想像で描いていました。ただし、勝手に空想で描くのではなく、過去の作品を参考にしたり、聖書など、言葉による描写,説明をふくらませて描いたものが多い。つまり、中世美術はほとんど幻想美術であったと言えますが、狭義の幻想美術には入らないかもしれません。
幻想美術の歴史を振り返ると、バランスや調和を尊ぶルネッサンス美術、18世紀の新古典主義や、リアリズムの時代には概して幻想美術は低調です。一方、自由な感性と想像力を駆使するロマン主義、現実には幻滅して、内面の世界、夢や無意識の世界に拘った世紀末の象徴主義、ある意味では象徴主義の末裔ともいえる20世紀のシュルレアリスムが、幻想美術の黄金時代であったと云えます。
(千足伸行著 「幻想美術の見方」(東京美術出版) を参考に記述。)
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